CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?CXを向上させるポイントやその意味を解説
2021年8月27日

商品のコモディティ化(市場に流通している各商品が個性を失い、どの商品をとってもその機能・価値に差異がほとんど無い状態)が進んだ結果、現代の市場においては商品の差別化を図ることが難しくなってきています。そこで、顧客体験を改善することで差別化を図る手法に注目が集まっています。

その顧客体験は「CX(カスタマーエクスペリエンス)」と呼ばれ、その注目度・重要性は年々高まってきているのです。

本記事でCXの定義・ポイントに触れ、CXに対する理解を深めていきましょう。

 CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?

 CX(カスタマーエクスペリエンス)の定義

CX(Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス)を直訳すると、「顧客体験となります。
Webマーケティング上におけるCXとは、 
顧客としてのあらゆる体験 を指します。
顧客体験とは、顧客がとある商品・サービスを購入する前から利用し続けた後までの一連の経験・体験を指します。
この場合、商品を直接通さない体験も顧客体験のうちに入ります。要するに、顧客の心理的・感情的な体験もCXのうちに含まれるのです。

この説明だけでは少し分かりにくいので、具体例を交えてみましょう。

まずとある顧客が家電量販店を訪れ、パソコンを購入したとします。
その際に生じる物質的な価値は、そのパソコン一台分だけです。
ですが顧客は、そのパソコンという物質的な価値だけで店の良し悪しを判断するわけではありません。

顧客は、店の雰囲気や商品を購入する際の高揚感といった心理的・感情的な体験によって、店の良し悪しを決めているのです。
このような心理的・感情的な体験も、CXとして分類されます。
※物質的価値はCXに含まれないというわけではありません。後ほど詳しくご説明します。

商品のコモディティ化が進んだ現代においては、このように心理的・感情的体験によってCXを向上し差別化を図ることで、顧客の獲得・売上の向上が模索されているのです。

UX(ユーザーエクスペリエンス)とCXの違い

CXによく似た概念として、UX(ユーザーエクスペリエンス)が存在します。ここでUXの定義を確認していきましょう。

 UX:ユーザーが一つの製品・サービスを通して得られる体験・感じたこと

これがUXの定義となります。

UXとCXは、その定義が似ていることから線引きが曖昧になることがよくあります。ではUXとCXでは、どの部分に違いがあるのでしょうか。

それは、CXにおいては商品・サービスを直接通していない体験・経験もCXに含まれるという点にあります。
言い換えれば、
UXに含まれる体験はCXにも含まれます

 例:商品・サービスを直接通している、いわゆるUXに分類されCXにも含まれる体験

  • デザインが綺麗
  • フォントが読みやすい
  • 画質が綺麗

 商品・サービスを直接通していない、いわゆるCXのみに分類される体験

  • 製品、サービス等の認知
  • 購入の検討
  • 更に新しい商品を購入する

 ポイント

  • 「製品、サービス等の認知」「購入の検討」という体験は、その時点では商品・サービスはまだ利用していないため、CXのみに含まれる
  • 「更に新しい商品を購入する」(例:付属品の購入、同系列の新商品購入)という体験はとある商品・サービスに起因する行為だが、商品・サービスを直接通しているわけではないので、CXのみに含まれる

CXに関するこれらの例やポイントを踏まえれば、CXに対するイメージが少しでも湧きやすくなるのではないでしょうか。

CX(カスタマーエクスペリエンス)がなぜ重要なのか

なぜCX(カスタマーエクスペリエンス)が重要視されているのでしょうか?
それはCXを向上させると以下のようなメリットがもたらされるからです。

①顧客は優良顧客(リピーター)となり企業に利益をもたらす可能性が高い

企業にとって長期的な売上や利益をもたらし、LTV(顧客生涯価値)を高めるのは優良顧客です。
ユーザーを優良顧客とすることは、商品やサービスの性能・価格といった物質的価値での満足度が向上すればよいということではありません。
つまり、顧客満足度の高さが企業の売上や利益に直結しないという現実です。

アメリカの世論調査会社、ギャラップ社の場合、「非常に満足」と回答した顧客は「合理的に満足」した顧客と「感情的に満足」した顧客に分けられるという調査結果を報告しています。
例えば、性能が良い、機能が豊富、価格が安い、使いやすい、長持ちするなどは「合理的に満足」であり、そのような満足度はそれらを上回る企業が出現することで成長がストップする可能性が高くなります。
あるいは、体力のある大企業しか生き残れなくなってしまう状況になりかねません。

しかし、価格は高いが店員の接客が丁寧といった良質な顧客体験(CX)の提供は心理的・感情的に顧客を満足させます。
「感情的に満足した顧客」は、商品の心理的・感情的価値に対して満足した顧客のことを指し、企業を信頼し企業や商品・サービスに愛着を持った顧客が増加します。そのことが企業の継続的な成長につながるのです。

②高評価の口コミが拡がり、新規顧客獲得を期待できる

CXが顧客の期待値を超えると、顧客は満足します。

満足した顧客は、インターネット上で高評価の口コミを投稿すること、または友人等に対して商品・サービスに関する肯定的な話をすることが予想されます。
すると次は別の人がその商品・サービスに興味を持ち、結果としてその商品・サービスの新規顧客となるのです。

このようにCXを向上させると、高評価が拡がることで新規顧客が増えることが期待されます。

③ブランドイメージの向上が達成される

②で触れたように、CXを向上させると商品・サービスに満足する顧客の数が増えます。
また商品・サービスに満足している顧客は、それらを提供している企業にもいいイメージを抱いているはずです。
つまり、CXを向上させると企業に対する良いイメージを持つ人の数も増え、結果的に全体としてのブランドイメージも向上するのです。

CXは現在、以上の3点が実現できるという点で非常に重要視されています。

CX(カスタマーエクスペリエンス)は5種類に分類できる

現代では物質的価値だけでなく、心理的価値・感情的価値も考慮した上で顧客のニーズを満たすことが求められています。
そこでアメリカの経営学者であるバーンド・H・シュミット氏は、心理的価値は5種類の経験価値に分類できるとしました。

SENSE(感覚的経験価値)

1つ目は、SENSE(感覚的経験価値)です。
これは、五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)を通じて顧客が体験・経験する価値のことを指します。
BGM・レイアウト・香り等からもたらされる雰囲気は、SENSE(感覚的経験価値)だと言えるでしょう。

FEEL(情緒的経験価値)

2つ目は、FEEL(情緒的経験価値)です。
これは、顧客の感情に働きかけることで生み出される価値のことを指します。
例えば店員の丁寧な接客によって、顧客に安心・信頼・感動といった価値が提供されます。これらの価値はFEEL(情緒的経験価値)だと言えます。

THINK(創造的・認知的経験価値)

3つ目は、THINK(創造的・認知的経験価値)です。
これは、顧客の創造心・知的欲求に働きかけることで生み出される価値のことを指します。
例えば美術館を訪れた際に感じる「興味深い」という感情や、パズルを完成させる際に感じる「このピースはどこに当てはめれるのだろう」という知的好奇心は、THINK(創造的・認知的経験価値)だと言えます。

ACT(肉体行動、ライフスタイルに関わる価値)

4つ目は、ACT(肉体行動、ライフスタイルに関わる価値)です。
これは、普段の生活では体験できない価値を提供することで、顧客の中に変化が起きた結果生じる価値のことを指します。
例えばどこでもドアを使用した際に感じる「私は最先端の技術を使っているんだ」という気持ちや、テーマパークでアトラクションを体験した際に感じる「こんな乗り物乗ったことない」という気持ちは、ACT(肉体行動、ライフスタイルに関わる価値)であると言えます。

RELATE(準拠集団への帰属による経験価値)

5つ目は、RELATE(準拠集団への帰属による経験価値)です。
これは、とある集団への帰属意識に絡めて生み出される価値のことを指します。
RELATEの最も分かりやすい例として、ファンクラブが挙げられます。
ファンクラブの会員は、好きなアーティストが主宰する集団に自分が属しているという帰属意識を持つことで、自尊心や特別心といった価値を感じます。ファンクラブ会員限定情報などが発信されれば、これらの価値はより高まるでしょう。
これらの価値が、RELATE(準拠集団への帰属による経験価値)として扱われます。

以上が5種類の経験価値になります。これら経験価値の存在を理解した上でCXを向上することは、顧客を獲得する上で非常に重要となります。

まとめ

現代では心理的・感情的な満足が求められており、その結果CXがより重要性を増しています。

UXは「ユーザーが一つの製品・サービスを通して得られる体験・感じたこと」でしたが、CXでは「商品・サービスを直接通していない体験・経験」も含まれます。
そして、CXを向上させることにより、物質的価値に加えて心理的・感情的価値にもユーザーと企業や商品・サービスとの結びつきが強くなります。
さらに、ユーザーの好意度が増せば高評価の口コミが広がりや、ブランドイメージの向上にも寄与します。

今後商品価値・企業価値をより高めていくために、CXに対する理解をより深めていきましょう。

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